小山朝子さん(当時、東京理科大学大学院修士1年)
1.当該コンペの参加経験が活かされたこと(想い出等)がありましたら教えてください。
小山さん:公開審査前は、子供達が何を感じて学んで欲しいのかという目的を立て、その方法としてどのようなワークショップを行うのかという、概念の世界だけでデザインを行っていました。しかし実施に向けて企画を見直していくステップでは、想定すべき事が膨大に増えていったのを覚えています。一度まとめた自分たちの企画に対し客観的に見直してみたり、WSの時間やルート・ルールなどを検討しながら本来の目的を思い返したりと、トータルデザインと細かなデザインを横断して行うことでやっと実施できるWSとなり、苦労した分想い出にもなりましたし、それぞれの自信にも繋がったと思います。
WSを企画していた当時は、メンバーの大半が卒業論文を書き終え数ヶ月といった状況だったのですが、翌年の修士研究では、デザインを横断的に行っていった経験が各々の研究に対し質の高める一因になったのではないかと思っています。
2.今後当該コンペに参加される学生(後輩)に向けて一言お願いします。
小山さん:社会人(組織人?)になると常にグループワークをすると思います。例えば「課題がこれです」とか「商品はこれです」とか、ある程度条件が定められた課題へのグループワークが多いと思いますが、このコンペのワークショップは、かなり条件の少ない白紙な状態から考える事ができるので、メンバーの個性が生きてくると思います。骨組みから作っていく分大変ではありますが、個性と個性の化学反応が楽しめる機会になるので、是非声を出して人を集めて、意欲的に楽しんで欲しいなと思います。
また、アイディアを考える際には本を読んだり、まちを歩いたり、童心に帰ってみたり、いろんな事を試しました。その中でも私たちは、まちの見方について教えてくれる本(例えば、電線を追ってまちを見てみようとか、水が流れる先をたどってみようなど)三浦丈典:『こっそりごっそりまちを変えよう』、彰国社、2012に出会い、企画のポイントである「視点をかえてまちを見てみる→自分以外のものになりきる」を決める事ができました。
3.あなたの現在の職務内容を教えてください。
小山さん:ゼネコンで都市開発に携わっています。ゼネコンなので、もちろん建物を建ててお金を稼ぐのですが、どのような建物をどこに建てるのか、どんな企業とともに何をやるのか、お客さんと話し合い社会の情勢・流行などのマーケティングを行いながら、プロジェクトのシナリオをデザインするようなお仕事です。新しい価値に目を向け新たな仕事をつくっていくイメージです。ディベロッパーと異なるのは、発注者じゃなくて、あくまでも受注側にいる仕事だよというところです。実際にはディベロッパーさんと一緒に仕事をすることも多いので、ちょっと捉えにくい業種だとは思うんですけど。
3、4年生の頃は設計職に興味を持っていたのですが、都市という少し広い視点から考える事で、社会の大きな流れを追いこれからについて考えていたいという思いがありました。それもあって、意匠設計のプロになるのではなく、そもそも影響力のあるゼネコンがどういうことをすればもっと良くなっていくのかという事が考えられる今の業種に就職したいと考えるようになりました。
4. あなたの現在の職務において、当該コンペ参加経験が活かされていることがありましたら教えてください。
小山さん:企業に入るとグループでの仕事が多いです。どんな場面でも論理立てて何かをつくるとか、でも論理だけで余計な物を剥ぎ落とし硬くなるのではなく、クリエイティブなアイディアを残しつつ、実現に向けて企画を落とし込むセンスのようなものが必要になってくると思います。そのセンスがつかめた自信はありませんが…
それでも企画構想から実施まで自分達の中で考え続けた経験はとても大きく、その後の研究室生活でも要所要所で応用が効く学びが沢山ありました。
インタビュー後記
小山さんのチームは、コンペ応募時の6人のコアメンバーに加え、約20人の学生ボランティアが当日ワークショップをサポートしてくれました。抜群のチームワークの秘訣を伺ったところ、事前説明会を3回に分けてやっ たり、ボランティア用資料をつくってシフトを組んだり、スタッフの体制をきちんと整えて臨んだおかげで、当日はスムーズに運営できたそうです。学生のころにこのような経験をした強みを生かし、社会に出てもますますのご活躍を期待しています。
インタビュアー:仲綾子・佐藤由紀子